『墨攻』

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酒見賢一の原作『墨攻』の映画化と思いきや、原作を森秀樹が漫画化した方が原作なんだそうな。
確かに酒見原作の方は革離(主人公)が死ぬけど森原作の方は死なないもんなあ。
それにしても映画版は革離がかっこよすぎ、原作(両方とも)じゃあ禿げヒゲオヤジよ(笑)。
映像に関してはCGがやけにしょぼい箇所があったりしたけど、全体として面白く観ることができた。

墨攻』の墨は、諸子百家の一つ、墨家の墨を指す。一学問集団っつーよりは宗教集団に似たところがあるな。教えの一つである「非攻」とは、簡単にいえば国家が他の国家を攻めてはならないということで、自分を愛するように他人を愛せという「兼愛」と共に墨子の教えの一大特徴なのだが、これだけだとあまたある宗教の教えとなんら変わらない。墨子のすごいところというかオリジナリティは、その教えを実践するために、ただそれを宣教するだけでなく、行動によって表現するところなのだ。すなわち国家に他国を攻めさせないためには、その攻撃が失敗すればよい、ゆえに攻められた側を守り、攻撃を成功させないことによって攻撃側をあきらめさせようとするのである。そしてそのために攻撃に対する防御に必要な戦闘能力を身につけることになる。「兼愛」や「非攻」といった平和主義的な理想を実現するために、自らはその思想とは正反対の戦闘集団という形ををとることになる。これを矛盾というか一貫していないというかは置いといて、少なくとも自らの思想を現実の社会において実現するためにはどうしたらいいかということを考えると、全ての人がその思想を受け入れれば解決するとしてただ他に教えを垂れるというような理想を吐くよりも、非常に合理的な対応だと思うのはわしだけか?